2027年4月、長く続いた技能実習制度に代わって「育成就労制度」が始まります。何が変わるのか、自社は対象になるのか、いつ何を準備すべきか——受入れを検討する企業の担当者が押さえておきたいポイントを、公式の一次情報をもとに整理しました。
本記事は2026年7月時点で公表されている法令・分野別運用方針・出入国在留管理庁の情報をもとに作成しています。制度の詳細は今後の政省令・運用要領で変わる可能性があります。実際の受入れ判断は必ず出入国在留管理庁など公式の最新情報でご確認ください。
育成就労制度とは(目的と全体像)
育成就労制度は、2024年6月に成立した改正入管法などにより創設された新しい在留資格で、2027年(令和9年)4月1日に施行されます。施行日以降、新規受入れの中心は技能実習から育成就労へ移ります。ただし、施行日時点で実施中の技能実習などについては経過措置が設けられ、一定期間、技能実習制度が併存します。
最大のポイントは、制度の目的が明確に変わったことです。技能実習制度は「技能移転による国際貢献」を建前としていましたが、実態は人手不足を補う労働力の確保であり、目的と実態の乖離が国内外から批判されてきました。育成就労制度は、この点を正面から見直し、「人材の育成」と「人材の確保」の2つを制度目的として明記しています。
制度の骨格はシンプルです。原則3年間の就労を通じて、特定技能1号の水準まで技能と日本語能力を育てることを目指します。つまり育成就労は、そのまま特定技能へつながる「入口」として設計されています。イメージとしては、育成就労(原則3年)→特定技能1号(原則通算5年以内)→特定技能2号(更新は必要ですが通算在留期間に上限なし)という流れで、長期的なキャリアを描けるようになります。
※進路は分野や本人によって異なります。特定技能2号が設けられていない分野もあり、たとえば介護分野では、介護福祉士資格を取得して在留資格「介護」へ移行するルートがあります。
育成就労を一言でいうと
「特定技能1号のレベルまで、3年かけて外国人材を育てるための在留資格」です。技能実習のように国際貢献を建前にせず、育成と定着を正面から目的に据えた点が本質的な違いです。
技能実習制度との主な違い
技能実習と育成就労は「外国人を受け入れて働いてもらう」という点では似ていますが、制度の思想が大きく異なります。企業にとって影響の大きい違いを表で整理します。
| 比較項目 | 技能実習制度(現行) | 育成就労制度(2027年4月〜) |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 技能移転による国際貢献 | 人材の育成と確保 |
| 特定技能との関係 | 結果的に接続(試験免除ルートあり) | 特定技能1号への移行を前提に設計 |
| 転籍(転職) | 原則不可 | 一定要件のもとで本人の意向による転籍が可能 |
| 日本語要件 | 入国時の要件は限定的 | 就労開始前にA1相当、修了時までに原則A2相当 |
| 受入れの単位 | 技能実習計画(機構が認定) | 育成就労計画(外国人育成就労機構が認定) |
| 支援・監理 | 監理団体 | 監理支援機関(許可制・要件を強化) |
とくに実務インパクトが大きいのが「転籍が認められること」と「日本語能力要件が引き上げられること」の2点です。転籍が可能になることで、受入れ企業は「来てくれた人材に選ばれ続ける」職場づくりが求められるようになります。詳しくは後述します。
対象分野・育成期間・受入れの仕組み
対象は17分野(育成就労産業分野)
育成就労の受入れ対象は「育成就労産業分野」と呼ばれ、2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針で定められました。特定技能の特定産業分野のうち、就労を通じて技能を身につけさせるのが適切な分野に限られ、全17分野とされています(特定技能の対象分野から、育成になじまない一部の分野を除いたもの)。介護、建設、農業、飲食料品製造業、外食業、宿泊、製造業、造船・舶用工業などが含まれます。自社の業種が対象かどうかは、必ず最新の分野別運用方針で確認してください。
育成期間は原則3年
育成就労の在留期間は原則3年です。この3年間で技能と日本語を計画的に伸ばし、特定技能1号の水準到達を目指します。なお、試験に不合格でも、一定の要件を満たせば、再受験のため最長1年まで在留を延長できます。
「育成就労計画」の認定が必須
受入れにあたっては、外国人ごとに3年間の「育成就労計画」を作成し、新設される「外国人育成就労機構」の認定を受ける必要があります。技能実習でいう技能実習計画に近い仕組みですが、育成の到達目標(技能・日本語)がより明確に組み込まれます。監理・支援を担うのは、許可制の「監理支援機関」です。
転籍(転職)のルール
技能実習制度では原則認められなかった転籍が、育成就労制度では条件付きで可能になります。これは労働者保護の観点からの大きな前進であると同時に、受入れ企業にとっては「定着」への本気度が問われる変更点です。
転籍には大きく2つのパターンがあります。
- やむを得ない事情による転籍:暴行・ハラスメント・重大悪質な法令違反や契約違反など、本人に責任のない事情がある場合。従来から例外的に認められてきた考え方に近いものです。
- 本人の意向による転籍:同一の受入れ機関で一定期間以上就労していることに加え、分野ごとに定める技能・日本語の水準を満たしていること、転籍先が優良な受入れ機関であることなどの要件を満たした場合に可能。
本人意向による転籍に必要な就労期間(転籍制限期間)は、1年以上2年以下の範囲で分野別運用方針に定められます。具体的な期間は、対象となる分野・業務区分の最新の運用方針で確認する必要があります。なお、分野別運用方針で1年を超える期間が設定されていても、育成就労実施者の判断で1年とすることが可能です。
受入れ企業が意識すべきこと
転籍が制度化されることで、賃金・労働環境・キャリア支援で他社に見劣りすると、育てた人材が転籍してしまうリスクが生じます。「採用して終わり」ではなく、日本語学習支援やキャリアパスの提示など、選ばれ続ける職場づくりが重要になります。
特定技能1号への移行要件
育成就労のゴールは、特定技能1号への移行です。技能実習と大きく異なるのは、試験免除ルートが廃止され、原則として試験合格が必須になる点です。
- 技能試験に合格する技能検定3級相当、または特定技能1号評価試験など、分野で定められた技能試験に合格します。
- 日本語試験に合格する就労開始前までにA1相当以上の日本語試験(日本語能力試験N5相当など)に合格するか、入国後講習でA1相当の講習を100時間以上受講します。育成就労修了時までには、原則としてA2相当(N4相当など)の日本語試験への合格が求められます。
- 特定技能1号へ移行する両試験に合格すれば、特定技能1号へ切り替え、通算最長5年の就労が可能になります。
特定技能1号でさらに実務経験を積み、より高度な試験に合格すれば、通算在留期間に上限のない特定技能2号への道も開けます(特定技能2号がない分野もあります)。特定技能1号と2号の違いは「特定技能1号と2号の違いを徹底比較」の記事で詳しく解説しています。
早めの試験対策が定着のカギ
育成就労では日本語・技能ともに試験合格が必須です。3年間のうちに計画的に学習を進められるかどうかが、特定技能への移行率、ひいては人材の定着を左右します。就労開始直後から学習の仕組みを用意しておくことが重要です。
施行スケジュールと企業がやるべき準備
制度は2027年4月1日施行ですが、それに先立って準備手続きが段階的に始まります。公表されている主なスケジュールは次のとおりです。
| 時期 | 主な内容 |
|---|---|
| 2026年4月15日〜 | 監理支援機関の許可申請の受付開始 |
| 2026年9月1日〜 | 育成就労計画の認定申請の受付開始(施行日前申請) |
| 2027年4月1日 | 育成就労制度の運用開始・新規受入れ開始 |
経過措置:既存の技能実習生はどうなる?
2027年4月1日の施行日時点で実施中の技能実習は、経過措置により原則として継続できます。また、施行日前に技能実習計画の認定申請を行い、施行後3か月以内に上陸許可を受けて開始する技能実習も、経過措置の対象となります。施行後に技能実習1号を修了した人は、一定の条件で技能実習2号へ進むことができます。一方、技能実習3号への移行には、原則として施行日時点で技能実習2号を1年以上行っていることなどの条件があります。単に「2027年3月末までに入国したか」だけで判断することはできないため、個別に経過措置を確認する必要があります。
これから受入れを始める企業のチェックリスト
- 自社の業種が育成就労の対象17分野に含まれるかを確認する
- 連携する監理支援機関(旧・監理団体)の許可取得状況を確認する
- 育成就労計画(技能・日本語の到達目標)を作成できる体制を整える
- 転籍時代に備えて、賃金・労働環境・キャリア支援を見直す
- 就労開始直後から取り組める日本語・技能の学習支援を用意する
育成就労は「育てて、特定技能へつなげる」制度です。受入れの入口を整えるだけでなく、3年後・8年後を見据えた育成と定着の設計こそが、これからの外国人材受入れの成否を分けます。
この記事のまとめ
- 育成就労制度は技能実習に代わる新しい在留資格で、2027年4月1日に施行される
- 目的は「人材の育成と確保」。原則3年で特定技能1号の水準まで育てることを目指す
- 対象は育成就労産業分野の17分野。外国人ごとの育成就労計画を機構が認定する
- 従来禁止だった転籍が、1〜2年の制限期間などの要件を満たせば本人意向でも可能に
- 特定技能1号への移行は試験免除が廃止され、技能試験と日本語試験(A2相当)の合格が必須
よくある質問
Q. 技能実習制度はいつ廃止されますか?既存の実習生はどうなりますか?
育成就労制度は2027年4月1日に施行され、新規受入れの中心は技能実習から育成就労へ移ります。ただし、施行日時点で実施中の技能実習や、施行日前に技能実習計画の認定申請を行い施行後3か月以内に開始する技能実習には経過措置があり、現行の技能実習制度のまま継続できます。技能実習3号への移行には、原則として施行日時点で技能実習2号を1年以上行っていることなどの条件があるため、単に入国時期だけでは判断できません。詳細は必ず出入国在留管理庁の最新情報でご確認ください。
Q. 育成就労と特定技能はどう違うのですか?
育成就労は「特定技能1号のレベルまで3年かけて育てる」入口の在留資格で、特定技能は一定の技能を持つ人が即戦力として働く在留資格です。育成就労を修了して試験に合格すると特定技能1号へ、さらに上位試験に合格すると特定技能2号へ進めます。違いの詳細は「特定技能1号と2号の違い」もあわせてご覧ください。
Q. 転籍(転職)は誰でも自由にできるのですか?
いいえ。ハラスメントや重大な契約違反などやむを得ない事情がある場合のほか、本人意向の転籍は同一機関での一定期間の就労(分野ごとに1〜2年の転籍制限期間)や、技能・日本語の一定水準の達成などの要件を満たす必要があります。完全に自由な転職ではなく、要件付きで認められる仕組みです。
Q. 育成就労では試験免除で特定技能に進めますか?
いいえ。技能実習で認められていた試験免除ルートは育成就労では廃止され、原則として技能試験と日本語試験(修了時A2相当)の合格が必要になります。3年間で計画的に学習を進めることが、特定技能への移行と定着のカギになります。
Q. 働きながらでも試験に合格できますか?学習支援は必要ですか?
はい、就労と両立しながら合格を目指すことは十分可能です。ポイントは、就労開始直後から少しずつ試験対策を積み上げること。特定技能サプリは、業種別の技能試験・日本語をスキマ時間にスマホで学べる教材を提供しており、忙しい現場でも計画的に合格レベルへ近づけます。育成就労世代の育成・定着支援にご活用いただけます。
※本記事は 出入国在留管理庁(育成就労制度Q&A・分野別運用方針)・厚生労働省 等の公開情報をもとに、特定技能サプリ編集部(株式会社AIサプリ)が作成しています。試験の最新の要項・日程・料金は必ず各試験実施機関の公式情報をご確認ください。合格率など最新の実施状況は、各試験実施機関の公表情報をご確認ください。