育成就労の転籍ルールとは?認められる条件と企業側の備えを解説
育成就労制度では、一定の条件を満たすと本人の意向で転籍できます。人材が流出しないか不安という受入れ企業の声も少なくありません。
本記事では、転籍が認められる条件と企業側の備えを、出入国在留管理庁の公表情報をもとに解説します。
結論から言うと、転籍のルールを正しく知り、働き続けたい職場づくりを早めに進めることが大切です。
本記事は2026年10月10日時点で出入国在留管理庁が公表している情報をもとにしています。転籍の具体的な手続き、優良な実施者の基準、初期費用の告示額は今後示される予定です。
》育成就労制度とは?2027年4月施行の新制度をわかりやすく解説
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講習について相談する【前提知識】育成就労の転籍とは
まずは転籍の意味と、転籍が認められる2つの場面を整理します。
ポイント①転籍は受入れ企業の変更
転籍とは、育成就労実施者(受入れ企業)を変えることです。
基本方針では、3年間を同じ企業で育成するのが望ましいとされています。そのうえで、一定の場合には転籍が認められます。
ポイント②転籍が認められる2つの場面
- やむを得ない事情による転籍:暴行、ハラスメント、重大で悪質な法令違反や契約違反などがある場合の転籍
- 本人意向による転籍:期間や試験合格などの要件を満たし、本人が希望する場合の転籍
- 主たる技能:育成の中心となる技能のこと。転籍の前後で変えないことが望ましいとされる
どちらの転籍も、同じ業務区分の中に限られます(出入国在留管理庁)。業務区分とは、分野の中で定められた仕事のまとまりです。
ポイント③制度の開始は2027年4月
育成就労制度は、2027年4月に始まる予定です(出入国在留管理庁)。転籍の詳しい手続きは、今後示される予定です(2026年10月時点)。
転籍には2つの場面があり、どちらも同じ業務区分の中に限られると押さえておきましょう。
本人意向による転籍の要件【本人側】
本人の意向で転籍するには、主に次の3つの要件を満たす必要があります(出入国在留管理庁 Q&A)。
要件①転籍制限期間を超えている
転籍制限期間とは、転籍前の企業で働く必要がある期間です。分野ごとに1年から2年の範囲で定められます。
2026年1月23日閣議決定の分野別運用方針では、介護・建設・外食業は2年、農業は1年です。自社の分野の期間は、分野別運用方針で確認しましょう。
再び本人意向で転籍する場合も、転籍制限期間の経過が必要です(出入国在留管理庁 Q&A)。
要件②技能と日本語の試験に合格
基本方針では、技能は技能検定基礎級か、相当する育成就労評価試験の合格が求められます。
日本語は、一般的にA2.1相当以上とされています(分野別運用方針の主要な記載事項)。介護のように、A2.2相当以上を求める分野もあります。
| 時点 | 日本語能力の一般的な水準 |
|---|---|
| 就労開始時 | A1相当以上、またはA1に相当する講習の受講 |
| 1年経過時 | A1相当以上 |
| 本人意向による転籍時 | A2.1相当以上 |
| 育成就労終了時 | A2.2相当以上 |
A1・A2などの日本語のレベルの意味は、育成就労の日本語要件|A1・A2相当とは何かを解説で紹介しています。
要件③民間の職業紹介を使わない
転籍に当たり、民間の職業紹介事業者による紹介を受けていないことが要件です。転籍の支援は、監理支援機関が中心となって行います。
本人側の要件は、期間・試験・紹介の方法の3点で確認しておきましょう。
転籍先の企業に求められる条件【受入れ側】
転籍者を受け入れる企業にも、次のような条件があります(出入国在留管理庁 Q&A)。
ポイント①転籍先の主な条件
- 優良な実施者:試験の合格率や法令の遵守状況などから、優良と認められること
- 同じ業務区分:転籍元と同じ業務区分の仕事に従事させること
- 人数枠:受入れの人数枠を超えていないこと
- 転籍者の割合:本人意向の転籍者が、育成就労外国人の総数の3分の1を超えないこと
優良かどうかは、試験の合格率や法令の遵守状況などから判断されます。具体的な基準は、今後示される予定です(2026年10月時点)。
ポイント②大都市圏は割合の上限が低い
大都市圏の転籍先では、地方から受け入れる転籍者は総数の6分の1までとされています。小規模な実施者には、別の扱いがあります。
ポイント③初期費用の一部を負担
転籍先は、転籍元が受入れにかけた初期費用の一部を負担します(出入国在留管理庁 Q&A)。
額は、告示で定める額に在籍期間に応じた割合(按分率)を掛けて計算します。告示は今後制定される予定です(2026年10月時点)。
ポイント④手続きは計画の認定から
- 申出:育成就労外国人が、本人意向の転籍を希望すると申し出る
- 計画の作成:転籍先が、その外国人の育成就労計画を作る
- 認定の申請:転籍先が、外国人育成就労機構に計画の認定を申請する
外国人育成就労機構は、育成就労計画の認定の申請先となる機関です。具体的な手続きは、決まり次第示されるとされています。
受け入れる側は、優良の基準・割合・費用負担の3点を事前に確認しておきましょう。
転籍元の企業が守るべきルール
人材を送り出す側の企業にも、守るべきルールと義務があります。
注意点①転籍の妨害は禁止
基本方針では、転籍に必要な試験の受験を妨げることなどを、不当な制限として禁じています。
転籍の申出をしたことを理由に、解雇などの不利益な扱いをすることも禁止です。
注意点②1年超の期間なら待遇向上
1年を超える転籍制限期間を選んだ企業は、就労開始から1年後に待遇の向上を図る必要があります。
内容は、昇給など分野ごとに定める基準を満たすものです(基本方針)。2年の分野でも、企業の判断で1年にすることができます。
ポイント③監理支援機関との連携
本人から申出があると、監理支援機関が関係機関との連絡調整を担います(出入国在留管理庁 Q&A)。外国人育成就労機構とハローワークも、転籍先の情報提供などで連携します。
監理支援機関の役割は、監理支援機関とは?許可要件と技能実習の監理団体との違いで詳しく解説しています。
転籍元は、妨げない・不利益に扱わない・待遇を上げるの3点を意識しておきましょう。
転籍に備えて企業ができること【定着のコツ】
転籍は、要件を満たせば本人に認められる選択肢です。企業は働き続けたい職場づくりで備えましょう。
ポイント①昇給の見通しを伝える
基本方針では、日本人と同等額以上の報酬と、就労期間に応じた昇給などが必要とされています。
昇給の時期や基準を、入社時から分かりやすく伝えることが大切です。
ポイント②日本語と技能の学習を支える
試験の合格は、転籍の要件であり、育成の目標でもあります。
学習を支えることは、本人の成長を企業が後押しする姿勢を伝える機会にもなります。
ポイント③相談しやすい体制をつくる
基本方針では、監理支援機関に母国語による相談への対応が求められています。
社内でも、困りごとを話せる担当者を決めておくと安心です。
ポイント④住まいと生活を支える
基本方針では、快適な住環境の確保や、食生活・医療の助言の体制づくりが求められています。
転籍のルールを知ったうえで、待遇・学習・相談・生活の4つの面から職場を整えていきましょう。
よくある質問
育成就労の転籍はいつからできますか?
育成就労制度は2027年4月に始まる予定です(出入国在留管理庁)。本人意向の転籍は、同じ企業で転籍制限期間(分野ごとに1〜2年)を超えて働いた後に可能になります。やむを得ない事情による転籍は、これとは別に認められています。
要件を満たした転籍を、企業が断ることはできますか?
転籍を不当に制限することは認められていません。基本方針では、転籍に必要な試験の受験を妨げることを禁じています。転籍の申出を理由とした解雇などの不利益な扱いも禁止です。
転籍者を受け入れる企業は、費用を負担しますか?
はい。転籍先は、転籍元が受入れにかけた初期費用の一部を負担します。額は告示で定める額に在籍期間に応じた按分率を掛けて計算し、告示は今後制定される予定です(2026年10月時点)。
転籍のときに人材紹介会社を使えますか?
本人意向の転籍では、民間の職業紹介事業者の紹介を受けていないことが要件です。転籍の支援は監理支援機関が中心となり、外国人育成就労機構やハローワークも連携します。
転籍制限期間が2年の分野でも、1年にできますか?
企業の判断で1年にできます(出入国在留管理庁 Q&A)。1年を超える期間にする場合は、分野ごとに定める待遇向上の措置が必要です。
この記事のまとめ
育成就労の本人意向の転籍は、期間・試験・転籍先の条件を満たした場合に認められます。転籍元には、不当な制限の禁止や待遇向上の義務もあります。
ただし、合う備え方は、分野や受入れ人数、職場の状況によって異なります。
日本語の学習支援や講習の進め方に迷う場合は、お気軽にご相談ください。
- 本人意向の転籍は、同じ業務区分の中で、転籍制限期間(分野ごとに1〜2年)を超えた後に認められる
- 転籍には技能の試験と日本語の試験(一般的にA2.1相当以上)の合格が必要
- 転籍先には、優良な実施者であること、転籍者の割合の上限、初期費用の一部負担などの条件がある
- 転籍元は転籍の妨害や不利益な扱いが禁止され、1年を超える期間なら待遇向上が必要
- 待遇・学習・相談・生活の面から、働き続けたい職場を整えることが備えになる
》育成就労制度とは?2027年4月施行の新制度をわかりやすく解説
出典・参考資料
参考:出入国在留管理庁「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する基本方針について」(令和7年3月11日閣議決定)
参考:出入国在留管理庁「育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針」
※本記事は 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」・出入国在留管理庁「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する基本方針について」(令和7年3月11日閣議決定)・出入国在留管理庁「分野別運用方針の主要な記載事項」・出入国在留管理庁「育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針」・出入国在留管理庁 分野別運用方針 別紙1(介護分野)・出入国在留管理庁 分野別運用方針 別紙5(建設分野)・出入国在留管理庁 分野別運用方針 別紙13(農業分野)・出入国在留管理庁 分野別運用方針 別紙16(外食業分野) 等の公開情報をもとに、特定技能サプリ編集部(株式会社AIサプリ)が作成しています。制度や試験の最新の要項・日程・料金は、必ず各実施機関の公式情報をご確認ください。