2027年4月に始まる育成就労制度では、原則として全対象分野で、就労開始前から一定の日本語能力または日本語講習の受講が求められます。A1相当・A2相当とは具体的にどのレベルなのか、いつ・どの試験で満たせばよいのかを、受入れ企業が押さえるべきポイントに絞って整理しました。
本記事は、2026年8月時点で公表されている関係法令、育成就労制度運用要領、分野別運用方針などをもとに作成しています。制度内容は今後改正される可能性があるため、実際の手続きでは最新の公式情報をご確認ください。
育成就労で日本語要件が新設された背景
2027年4月に施行される育成就労制度は、これまでの技能実習制度に代わる新しい在留資格です。最大の特徴のひとつが、日本語能力の要件が制度として明確に組み込まれたことです。
技能実習では、入国時に日本語能力を必須とする仕組みは限定的でした。これに対し育成就労は「人材の育成と確保」を目的に掲げ、外国人本人が3年間の育成期間を経て特定技能1号へ円滑に移行できるよう、段階的に日本語力を高める設計になっています。技能実習からの変更点全体は育成就労と技能実習の違いの記事もあわせてご確認ください。
ポイント
育成就労では「就労を始める前」「就労開始から1年以内」「特定技能1号へ移行するとき」という複数のタイミングで日本語能力が確認されます。技能実習では日本語要件が職種などによって限定されていましたが、育成就労では原則として全対象分野に、段階的な日本語能力の目標が設けられます。
A1相当・A2相当とは何か(日本語教育の参照枠)
育成就労の日本語要件でくり返し出てくる「A1相当」「A2相当」は、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を参考に文化庁が定めた「日本語教育の参照枠」の水準です。A1、A2、B1と進むほど、対応できる場面や言語活動の範囲が広がります。
| レベル | できることの目安 |
|---|---|
| A1相当 | あいさつや自己紹介など、ごく基本的な表現を使ってゆっくりであればやり取りできる。生活・現場で頻出する簡単な語や指示を理解できる入口レベル。 |
| A2相当 | 日常生活や職場で、身近な事柄について簡単な情報のやり取りができる。基本的な「報告・連絡・相談」が成り立つレベル。 |
ざっくり言えば、A1は「あいさつ・簡単な会話ができる入口」、A2は「現場で最低限のホウレンソウができる」水準というイメージです。育成就労はこのA1からA2へと3年かけて引き上げることを制度の骨格にしています。
求められる水準(基本の3つ+転籍時)
育成就労の日本語要件は「一度クリアすれば終わり」ではなく、就労のステージごとに段階的に設定されています。まずは就労開始前・育成期間中・特定技能1号移行時の3つを基本の骨格として押さえると理解しやすくなります。
- 就労開始前:A1相当就労を開始するまでに、A1相当以上の日本語試験に合格しているか、入国後講習において認定日本語教育機関等によるA1相当の日本語講習を100時間以上受講していることが求められます(いずれかを満たす)。
- 開始から1年以内:A1相当の試験受験育成就労を開始してから1年以内に、A1相当の日本語試験を受験することが中間確認として位置づけられています。講習ルートで入国した人も、ここで到達度を確認する流れです。
- 育成就労終了時(特定技能1号移行時):A2相当3年間の育成を経て特定技能1号へ移行する際には、A2相当以上の日本語試験(日本語能力試験N4等)への合格が要件となります。日本語がA2に届かなければ移行できない設計です。
以下は、この基本の3ステップとは別の場面です。本人の意向による転籍時にも、日本語能力が要件となる場合があります。
本人意向による転籍時(基本の3ステップとは別)
本人の意向による転籍では、同一機関での就労期間などに加え、分野別運用方針で定められた日本語能力を満たす必要があります。JFT-BasicのA2.1判定は、主にこの転籍要件の確認で使われることが想定されています。必要な水準は分野・業務区分によって異なるため、対象分野の運用方針を確認してください。
注意
対象となる試験や講習実施機関などの詳細は、育成就労制度運用要領と各分野の運用要領で確認してください。「100時間の講習を受ければ必ず足りる」といった単純な理解は避け、公式基準にもとづいて計画してください。
JLPT・JFT-Basicとの対応
「A1相当・A2相当」と言われても、実際にどの試験を受ければよいのか気になるところです。目安としては、日本語能力試験(JLPT)と国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)が代表的です。
| 制度上の水準 | JLPTの代表例 | JFT-Basic |
|---|---|---|
| A1相当以上 | N5以上に合格 | 145点以上(A1以上) |
| A2相当以上 | N4以上に合格 | 200点以上(A2) |
JFT-Basicは2026年8月から、従来のA2に加えてA1・A2.1のレベルも判定できるように改定され、特定技能制度だけでなく育成就労制度の水準確認にも活用できる位置づけになりました。得点は10〜250点で、目安として145〜174点がA1、175〜199点がA2.1、200点以上がA2.2(A2)と判定されます。なお、JLPTはCEFRレベルの参考表示が始まっていますが、会話・作文を直接測定しない試験である点には留意が必要です。
特定技能側の日本語要件や、そこから先の特定技能2号までの流れは、1号と2号の違いや1号から2号への移行手順もあわせて確認しておくと、育成就労からのキャリアパス全体が見通せます。
100時間講習という代替ルート
就労開始前のA1相当は、試験合格だけでなく入国後講習において認定日本語教育機関等によるA1相当の日本語講習を100時間以上受けるという代替ルートが用意されています。A1相当の試験に合格していない場合でも、所定の入国後講習を修了することで就労開始前の要件を満たせる仕組みです。講習の一部を本国で行うことが認められる場合もあります。
2つのルート
①A1相当の試験に合格する/②入国後講習において認定日本語教育機関等によるA1相当の日本語講習を100時間以上受講する。企業は本人の状況に応じて、どちらで要件を満たすのかを送出機関・監理支援機関と早めに整理しておく必要があります。
ただし注意したいのは、育成就労中もA2相当の講習機会(100時間以上)の提供が受入れ側に求められる点です。就労開始前だけでなく、就労させながら日本語を伸ばす支援体制まで含めて計画する必要があります。単に「100時間こなせば終わり」ではなく、A2到達という質の目標が置かれていると捉えてください。
受入れ企業が準備すべきこと
育成就労の日本語要件は、外国人本人だけの問題ではなく、受入れ企業のオペレーションに直結します。技能実習からの切り替えを見据え、次の観点を早めに固めておきましょう。
- 入口設計:就労開始前に試験合格ルートで来るのか、講習ルートで来るのかを送出機関・監理支援機関と確認する
- 育成計画:3年でA2到達を目指す学習スケジュールと、講習機会(100時間以上)の提供方法を用意する
- 移行の逆算:特定技能1号への移行にはA2相当の合格が必須。試験日程から逆算して受験機会を確保する
- 費用と役割分担:教材・受験料・学習時間の扱いを就業条件とあわせて整理する
特に「特定技能1号へ移行できなければ育成の投資が実らない」という点は経営インパクトが大きく、日本語学習の伴走をどう仕組み化するかが受入れ成功の分かれ目になります。特定技能受入れのメリット・デメリットも参考に、長期の人材戦略として捉えることをおすすめします。
この記事のまとめ
- 育成就労(2027年4月施行予定)では原則として全対象分野で、就労開始前から日本語能力(A1相当)または日本語講習の受講が求められる
- A1相当は「あいさつ・簡単な会話ができる入口」、A2相当は「現場で基本的なホウレンソウができる」水準の目安
- 要件は3段階:就労開始前=A1相当/開始1年以内=A1相当の試験受験/特定技能1号移行時=A2相当(N4等)合格
- A1相当はJLPT N5以上、A2相当はN4以上の合格が代表例。JFT-Basicも2026年8月からA1相当の判定に対応
- 就労開始前は試験合格または100時間以上の講習で満たせるが、育成中もA2到達に向けた学習支援が求められる
よくある質問
Q. 育成就労を開始する前に、どのレベルの日本語が必要ですか?
就労を開始するまでに、原則としてA1相当以上の日本語試験(JLPT N5以上の合格が代表例)に合格するか、入国後講習において認定日本語教育機関等によるA1相当の講習を100時間以上受講する必要があります。必ずしも入国前にA1試験へ合格していなければならないわけではありません。
Q. A1相当・A2相当は、どの試験を受ければ証明できますか?
A1相当の代表例は日本語能力試験(JLPT)N5以上の合格、A2相当はN4以上の合格です。国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)も2026年8月からA1・A2.1の判定に対応しました。対象となる試験の詳細は育成就労制度運用要領・各分野の運用要領でご確認ください。
Q. 特定技能1号に移行するには、どのくらいの日本語力が必要ですか?
育成就労を終えて特定技能1号へ移行する際には、A2相当以上の日本語試験(日本語能力試験N4等)への合格が要件となります。A2に届かないと移行できないため、3年間の育成期間で計画的に学習を進めることが重要です。
Q. 働きながらでもA2まで日本語力を伸ばせますか?
はい。育成就労は3年かけてA1からA2へ段階的に引き上げる設計で、就労中もA2相当の講習機会の提供が求められます。特定技能サプリでは業種別の試験対策と現場語彙をスマホで学べるため、忙しい就労者でもスキマ時間で学習を継続できます。企業の日本語教育の負担軽減にも活用いただけます。
Q. 技能実習と比べて、企業側の負担は増えますか?
日本語に関しては、就労開始前のA1相当確認や、育成期間中のA2相当講習機会の提供など、育成就労実施者である受入れ企業や監理支援機関が担う役割は明確に増えます。一方で、日本語力が担保された人材を育て特定技能へつなげられるため、長期的な人材確保という観点ではメリットも大きい制度です。詳しくは育成就労と技能実習の違いをご覧ください。
※本記事は 出入国在留管理庁・国際交流基金(JFT-Basic)・法務省 等の公開情報をもとに、特定技能サプリ編集部(株式会社AIサプリ)が作成しています。試験の最新の要項・日程・料金は必ず各試験実施機関の公式情報をご確認ください。合格率など最新の実施状況は、各試験実施機関の公表情報をご確認ください。