日本語能力A1とはどの程度?会話例と企業が学習支援に使う確認ポイント
育成就労の準備で、「A1相当の日本語力」という言葉を目にする機会が増えています。一方で、実際にどの程度話せるのか分からないという声も少なくありません。
本記事では、A1でできることと職場での会話例を解説します。文化庁・文部科学省や出入国在留管理庁などの公表情報をもとに、企業の確認ポイントもまとめます。
結論から言うと、A1は相手がゆっくり話せば簡単なやり取りができるレベルです。職場では、周囲の話し方の工夫とA2に向けた学習計画をセットで考えることが大切です。
育成就労制度は2027年4月1日に運用開始の予定です(出入国在留管理庁)。本記事は2026年10月時点の公表情報をもとにしています。分野によって求められる日本語の水準が異なるため、最新の運用要領もあわせてご確認ください。
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講習について相談する【前提知識】日本語能力A1とは?参照枠での位置づけ
A1は、「日本語教育の参照枠」の6段階のうち最初のレベルです。この章では、公式の説明と位置づけを整理します。
ポイント①6段階の最初のレベル
日本語教育の参照枠は、日本語の力をA1〜C2の6段階で示す共通の物差しです。2021年10月12日に、文化審議会国語分科会が報告として取りまとめました(文化庁)。
A1とA2は基礎段階の言語使用者とされ、A1はその入り口にあたります。ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)という国際的な基準を参考にしています。
ポイント②公式の説明の3つの要素
参照枠の全体的な尺度では、A1の力を次の3つの要素で説明しています。
- 日常表現:具体的な欲求を満たすための、よく使われる表現や言い回しを理解し、使える
- 自己紹介:自分や他人を紹介し、住まいや持ち物などについて質問し、答えられる
- 簡単なやり取り:相手がゆっくり、はっきり話し、助け船を出してくれれば、やり取りできる
つまりA1は、相手の配慮があれば基本的なやり取りができるレベルです。
注意点③A2との違い
A2になると、買い物や仕事など身近な領域の情報交換に応じられるとされます。A1は、相手の助けがあることを前提にしている点が大きな違いです。
A1は日本語の入り口のレベルであり、職場では周囲の配慮が前提になると押さえておきましょう。
日本語能力A1はどの程度?職場で使える会話例
A1でできることを、職場の場面に当てはめた会話例で紹介します。会話例は、参照枠の記述をもとに編集部が作成したものです。
会話例①あいさつと自己紹介
参照枠のA1には、紹介や基本的なあいさつの表現を使えることが含まれます。名前や出身を伝える程度の自己紹介が目安です。
会話例(入社初日)
上司:「おはようございます。お名前は?」
本人:「グエンです。ベトナムから来ました。よろしくお願いします。」
会話例②物を頼む・時間を伝える
A1では、人に物を頼んだり、数や時間を扱ったりできるとされています。「3時」「来週」のような表現で時を伝えることも含まれます。
会話例(作業の準備)
本人:「すみません、手袋をください。」
同僚:「はい、どうぞ。」
本人:「ありがとうございます。休けいは3時ですか。」
同僚:「はい、3時です。」
会話例③ゆっくり伝えられる短い指示を理解する
A1では、注意深くゆっくり言われた質問や短い指示なら理解できるとされます。速い話し方や長い説明は、まだ難しい段階です。
会話例(作業の指示)
先輩(ゆっくり):「この箱を、あそこに、運んでください。」
本人:「この箱ですね。わかりました。」
反対に、早口の連絡や「あれ」「それ」の多い説明は伝わりにくいと考えておきましょう。
A1の会話は短い定型表現と、ゆっくりした指示の理解が中心だと押さえておきましょう。
育成就労で求められるA1相当とは?試験と講習
育成就労では、就労開始までにA1相当以上の日本語能力が求められます。この章では、示し方と時期を整理します。
ポイント①就労開始までの2つの方法
出入国在留管理庁は、A1相当以上の試験合格か、相当する講習の受講を示しています。方法は次の2つです。
- 試験に合格する:JFT-BasicのA1相当以上や、日本語能力試験(JLPT)のN5等
- 講習を受ける:認定日本語教育機関の「就労」課程で、A1相当の講習を100時間以上受講
同庁のQ&Aでは、A1相当の試験に合格しないと入国できないわけではないと説明されています。
講習の委託先を探す場合は、育成就労の日本語教育はどこに頼む?も参考にしてください。
ポイント②JFT-BasicのA1判定
国際交流基金のJFT-Basicは、2026年8月からA1とA2.1も判定できるようになりました。総合得点10〜250点のうち、145〜174点がA1です。
175〜199点はA2.1、200〜250点はA2.2(A2)と判定されます。結果は受験当日に分かり、判定結果通知書は受験日から5営業日以内に発行されます(国際交流基金)。
ポイント③就労開始後の目標
同庁のQ&Aでは、育成就労の開始から1年以内にA1相当を修得し、試験を受けることが求められています。3年間を通じた目標は、A2相当の試験合格です。
分野によっては、より高い水準が上乗せされる場合があります。自社の分野の運用要領で確認しておきましょう。
要件の全体像は、育成就労の日本語要件|A1・A2相当とは何かを解説でまとめています。
A1相当は就労開始時の入り口の水準であり、1年後・3年後の目標まで続けて計画することが大切です。
企業が学習支援に使うA1の確認ポイント
A1の人材を受け入れるときは、今の力の確認と次の目標の設定が学習支援の出発点です。確認したいポイントは次の4つです。
確認ポイント①証明の種類と時期
まず、どの試験や講習でA1相当を示したかを確認します。JFT-BasicでA1が判定されるのは、2026年8月以降に受けたテストです(国際交流基金)。
確認ポイント②聞く・話すの得意不得意
同じA1でも、聞くことと話すことの得意不得意は人によって異なります。参照枠は、聞く・読む・話す(やり取り・発表)・書くの5つの言語活動で力を示しています。
文部科学省の資料では、参照枠に基づく自己評価ツール「にほんごチェック!」も紹介されています。本人の自己評価を、面談の材料にする方法もあります。
確認ポイント③現場の言葉の洗い出し
A1は日常表現が中心のため、業務で使う言葉は別に覚える必要があります。安全に関わる言葉や、よく使う指示から優先して共有しましょう。
- 安全の言葉:「危ない」「止まって」など、すぐに反応が必要な言葉
- 道具や場所の名前:毎日使う物や、作業場所の呼び方
- 報告の型:「終わりました」「わかりません」などの短い定型文
- 時間と数:休けいの時刻や個数など、A1でも扱いやすい表現
確認ポイント④A2に向けた目標
A1の先には、1年以内の試験受験と、3年間でのA2相当の合格という目標があります。いつ何を学ぶかを、月ごとの計画に落とし込むと進めやすくなります。
JFT-BasicのFAQでは、『いろどり 生活の日本語』の「入門(A1)」がA1に対応すると案内しています。
学習支援は、証明・得意不得意・現場の言葉・次の目標の4点から確認すると整理しやすくなります。
A1の人材と働くときの職場の伝え方
A1は、相手の配慮があれば話せるレベルです。この章では、周囲が日本語の伝え方でできる工夫を手順で紹介します。
手順①ゆっくり短く区切って話す
参照枠のA1は、相手がゆっくり、はっきり話すことを前提にしています。一文を短くし、一度に一つの指示を伝えましょう。
手順②実物や見本を見せる
言葉だけで伝わりにくいときは、実物や写真、手本の動作を合わせて見せると理解を助けます。
手順③復唱で理解を確かめる
「わかりましたか」と聞くだけでは、本当に理解したかは分かりにくいものです。指示の内容を本人に言い返してもらうと、確認しやすくなります。
A1の時期は、周りの伝え方の工夫が本人の学習と同じくらい大切だと考えておきましょう。
よくある質問
日本語能力A1とJLPTのN5は同じですか?
出入国在留管理庁の資料では、JLPTのN5等がA1相当以上の試験の例として挙げられています。ただし、参照枠とJLPTは別の物差しです。
JLPTの公式サイトでは、N5の目安をゆっくり話される短い会話から必要な情報を聞き取れること等としています。
A1相当の試験に合格していないと入国できませんか?
合格していなくても、入国できないわけではありません。出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aで、そのように説明されています。
その場合は、認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受講する方法があります。
A1のレベルで仕事の指示は理解できますか?
ゆっくり言われた短い指示なら理解できるのがA1の目安です。参照枠では、注意深くゆっくり表現された質問や指示を理解できるとされています。
早口や長い説明は難しいため、実物を見せる・復唱してもらうなどの工夫が役立ちます。
JFT-BasicでA1かどうかはどう分かりますか?
総合得点が145〜174点ならA1と判定されます(国際交流基金)。2026年8月から、A1とA2.1も判定できるようになりました。
結果は受験当日に分かり、判定結果通知書は受験日から5営業日以内に発行されます。
A2.1とはどのようなレベルですか?
A1に到達し、A2.2に向けて学習が進んでいるレベルです。出入国在留管理庁の育成就労制度の資料で、このように定義されています。
育成就労では、分野ごとに設定され、本人意向による転籍の条件などに関わる水準です。
この記事のまとめ
A1は、相手がゆっくり話せば簡単なやり取りができる日本語の入り口のレベルです。育成就労では、就労開始までにA1相当、その後はA2相当を目指します。
ただし、合う学習の進め方は、分野や仕事の内容、本人の得意不得意によって異なります。
特定技能サプリでは、育成就労の日本語講習のご相談を承っています。受け入れ準備の段階でも、お気軽にお問い合わせください。
- A1は「日本語教育の参照枠」の6段階のうち最初のレベル
- 相手がゆっくり話せば、あいさつや簡単なやり取りができる
- 育成就労では就労開始までに、A1相当の試験合格か講習受講が必要
- JFT-Basicは2026年8月からA1を判定(総合得点145〜174点)
- 学習支援は証明・得意不得意・現場の言葉・次の目標から確認する
》育成就労の入国前講習とは?入国後講習との役割分担と企業の確認事項
》育成就労の日本語教育はどこに頼む?委託先の選び方と比較の視点
》育成就労から特定技能1号への移行とは?要件と手続きの流れを解説
出典・参考資料
参考:文化庁(文化審議会国語分科会)「日本語教育の参照枠」報告(2021年10月12日)
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※本記事は 文化庁(文化審議会国語分科会)「日本語教育の参照枠」報告(2021年10月12日)・文化庁 報道発表「日本語教育の参照枠」の取りまとめ・文部科学省「日本語教育の参照枠」の概要資料・出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」・出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)・国際交流基金「JFT-Basicとは」・国際交流基金「JFT-Basic よくある質問」・日本語能力試験(JLPT)「N1〜N5:認定の目安」 等の公開情報をもとに、特定技能サプリ編集部(株式会社AIサプリ)が作成しています。制度や試験の最新の要項・日程・料金は、必ず各実施機関の公式情報をご確認ください。